環境への取り組み
かつて山と森は神と精霊が住む地でした。
近代になり工業化が進むに従って
山は経済活動の対象となりました。
山に所有権が生まれると乱伐が繰り返され、
瓦礫が剥き出しとなった表土は
もはや植林不能となったのです。
支える土壌、草木も無く、
いたるところに土石流や崩落が起こり、
その結果山は疲弊していきました。
人の営みにより崩壊した山に、
息も絶え絶えになった草津川の流れが
埋もれていたのです。
人手を拒否するほど荒廃した山に、
一筋の清らかな流れが残っていたのは、
私にとって大きな喜びでした。
山の底力を見せつけられた気がしたのです。
崩壊した山に入る度に、
山を元の姿に戻せないだろうかと考えるようになりました。
私が子供の頃の山の匂いや透明な川のきらめきを
思い出していたのです。
土砂を取り除き、流れを堰き止めていた石を動かすと、
山は少しずつ息を吹き返していきました。
自然の力に支えられて渓流を守る強い気持ちは、
取り組み始めて15年過ぎた現在も続いています。
鳥飼酒造 鳥飼和信